下風呂温泉郷
本州北の果ての海沿い 青森県下北半島 風間浦村に、 幾百年ものあいだ湯治場として親しまれてきた『下風呂温泉郷』がある。
「ああ、湯が滲みて来る。本州の北の果ての海っぱたで、雪の降り積る温泉旅館の浴槽に沈んで、俺はいま硫黄の匂いを嗅いでいる。」
作家・井上靖の小説『海峡』の一節である。
昭和33年3月9日、「ここなら渡鳥の声が聞ける」と紹介された井上靖が、津軽海峡に面した下風呂温泉郷を訪れ、『海峡』の終局を執筆したのであった。
背後には山が迫り、目の前には津軽海峡が広がる。山海に挟まれたわずかな土地に宿がひしめく下風呂温泉郷は古くから温泉地として知られ、多くの湯治客でにぎわったという。潮の香りに織り交ざる硫黄のにおいに出迎えられ、新鮮な海の幸に舌鼓を打つ。
津軽海峡の水平線に見えるのは夜の空と海とを照らすイカ釣り漁船の漁り火。
小説に描かれていたような情緒あふれる温泉郷が今もなお残っていて、昔と変わらず聞こえてくる潮騒の心地よい響きは旅人の癒しとなる。
室町から続く名湯のある下風呂温泉郷は旅の疲れを解きほぐす「やすらぎの場」。
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